プラチナ万年筆 創業100周年記念イベント@青山・書斎館

2019年4月6日に開催されました「プラチナ万年筆 創業100周年記念イベント」のワークショップ「《通の万年筆サロン》~豊かな道具と空間で楽しむ作画のひととき~」のイベントレポートです。

Facebookグループ「万年筆ラクガキ部」のメンバー限定でサロン形式のイベントを開催いたしました。

今回は「ワークショップ」ではなくあえて「サロン」と銘打ちまして、技法そのものではなく「絵を作り上げていく考え方」を体験いただく内容としました。

構想自体は随分前からあったものでしたが、それを実現するにはいくつものハードルがありました。なかでも1番大切なところは「描く楽しみをすでに知っていること」です。
これまでやってきたワークショップの目的は、大人になって絵を描かなくなった方々に、普段から使用している筆記具を使って描く楽しみを知っていただくことでした。

一方で、絵にはただ描くだけでなく、考える楽しみ方もあります。ただそれは1段階高いハードルがありましてね、「出口のない森に踏み込む」ような不安が伴うことがあります。見本通りに描いていくだけでも絵は十分に面白い。でも、ゼロから画面を作り上げていくことはさらに面白い。それを体験するためには、大前提として「描く楽しみを知っている」必要があります。

万年筆ラクガキ部は2017年の8月にスタートし、少しずつメンバーを増やしながら現在600名を超える大所帯になりました。日々の投稿数も多く、また画力によって上下関係ができるわけでもなく、純粋に描くことを皆さまが楽しむグループに成長し、管理者である僕が何もしなくても活き活きとした作品たちが日々アップされています。傍目から見てもその楽しさが伝わってくるほどです。

そんな時、書斎館さんからプラチナ万年筆 100周年記念イベントの一環としてワークショップのオファーをいただきました。会場の都合から少人数制で実現できないか?とのことで、普段は採算も考慮し1コマ10〜15名くらいで設定している中、上限4名となります。さて、どうしよう?と一瞬迷いつつも逆に少人数制だからこそできるイベントにしようじゃないか、と切り替えました。


豊富な道具、落ち着いて手紙を書いたり読書をしたくなるインテリアに囲まれた空間、講師や隣の参加者さんとの対話を楽しめる距離感と時間的なゆとり。そして、ご参加いただく方々はすでに「描くことを楽しむ」下地を持っている…あぁ、ラクガキ部のメンバーならきっとそれができるだろうな、と。

仲介いただいた神戸派計画さんに、すぐその企画概要をお送りし準備に入ります。プラチナ万年筆さんからは参加特典とメインで使用するペン(プロシオン)をご用意いただき、その他各種作画用の道具も揃い、沢山のインクを試していただくためのガラスペンもラインナップしていただきました。そしてイベント告知後、数時間で満席になりました。

あとは、肝心のプログラムだ。ぼんやりとした構想はあれど、実際に2時間でどこまでできるのか。胃が痛くなります…というかなりました。参加者全員がラクガキ部員とはいえ、それぞれの画力は方向性も練度もバラバラ。共通しているのは「描くことが楽しい」というのと、万年筆を日頃から使っているところだけです。


難易度の高いテーマを選ぶだけなら簡単です。でもこのサロンはデッサン教室でも絵画教室でもありません。画力を上げることそのものは目的ではないんですね。必要なのは「絵を考える」体験。オリジナルの絵を描く快楽を味わっていただくこと。

テーマは3つ用意しました。人物、植物、装飾。このどれかを主体にして、自由に組み合わせて画面を構成し、1枚の絵を描いていただくことがゴール。人物は事前に用意した写真をモデルに簡易的なクロッキーからはじめ、植物はこれまでのワークショップで取り扱ったモチーフから選んでいただき、装飾はその場ですぐに描けるゼンタングルを採用。さぁ、みなさん、あとは描くだけですよ!という感じです。


ええ、結果的にはさすがはラクガキ部員と言わざる得ません。皆さま、僕の予想をはるかに超える完成度で作品を作り上げてくださいました。本当に、素晴らしいの一言です。

一方で、ご参加いただいた方々全員がですね、これ以上になくお疲れのご様子でした。そこは大変申し訳なく思っております(笑)作画を考えることは、手を動かすだけではなく、頭をフル回転させて行います。慣れが必要なんですね。


糖分補給のタイミングが必要だっただろうか…とか、各お題の選択肢をもう少し減らすべきだっただろうか…時間にあと少しユトリがあれば良かっただろうか…などと多くの反省点を残しつつも、その後のラクガキ部投稿記事やイベント終了後のご感想などからは揃って「(疲れたけど)楽しかった」というお声をいただけました。

楽には描けない作画体験。イベント名に「ラクガキ」と入れなくて良かった…というのは、命名当初はただの感だったわけですけれど、本当に良かった(笑)全然「ラク」ではありませんでしたね。

「大人の鉛筆」「プロシオン」「プレピー」「練りゴム」「ガラスペン」「ガラス棒」「クロッキー紙」「羽箒」「グラフィーロ」「ワトソン紙」「多種多様のインク」「美味しいアイスコーヒー・アイスティー」「味わいのある机・椅子」などなど盛り沢山の道具や設備、サービスの中で実現した今回のイベント。少々ヘビーなお題であっても許していただけることと信じております。

私にとっての万年筆の聖地、書斎館様。

私が愛してやまない万年筆メーカー、プラチナ万年筆さま。

私の表現を支えてくれる紙ブランド、神戸派計画さま。

私のホームグラウンド、万年筆ラクガキ部のみなさま。

みなさまのおかげで、本サロンは実現できました。

心より感謝申し上げます。

今回参加できなかった部員のみなさまも、また機会を作れましたら是非ご参加くださいませ。


また、まだ部員になられていない方で、この記事を読まれた方。是非万年筆ラクガキ部で「描く楽しみ」を知っていただけたら幸いです。楽しい仲間たちと楽しいひとときをお過ごしくださいませ。


またいつか、このようなイベントができますように。
心より願っております。

万年筆ラクガキ部
部長 サトウヒロシ

サトウヒロシの万年筆ラクガキ帳

万年筆画家サトウヒロシの「万年筆ラクガキ」にテーマをしぼったサイトです。 作画工程やラクガキ企画、ワークショップのご案内など本テーマに関わる色んな記事を提供します。

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